誰にも言わないでください、衝撃のラスト12分間。
佐村河内守氏のその後に密着した注目のドキュメンタリー。

聴覚障害をもちながら、「鬼武者」などのゲーム音楽や『交響曲第1番《HIROSHIMA》』を発表し、「現代のベートーベン」とまで称賛された佐村河内守氏。しかし「週刊文春」で音楽家の新垣隆氏が佐村河内氏との関係を告白、掲載翌日の会見で佐村河内氏のゴーストライターとして18年間にわたり作曲をしていたこと、佐村河内氏が楽譜を書けないこと、耳は聞こえており、通常の会話でやり取りしていたと語った。いっぽう、佐村河内氏は、主要な楽曲が自身だけの作曲ではないことについては代理人を通じて公表し、後の会見でゴーストライター騒動を謝罪した。しかし、新垣氏に対しては名誉棄損で訴える可能性があると語った。そして、その後はメディア出演を断り、沈黙を続けていた。
本作は、そんな佐村河内氏のその後に密着したドキュメンタリー。『A』『A2』以来実に15年ぶりの森達也監督が放つこの映画は、社会に瀰漫する時代の病をあぶりだしながら、衝撃のラストへとなだれ込む。



ー佐村河内守氏、映画で復活なるかー
佐村河内守氏のドキュメンタリー映画『FAKE』は、2014年3月7日に行われた謝罪会見後、同年9月から今年1月まで、およそ1年4ヶ月間に渡って撮影された。
監督は、オウム真理教の事件後も教団に残り続ける信者達にカメラを向け、そこから見えてくる日本社会の姿を記録し続けた映画「A(エー)」「A2 (エー・ツー)」で知られる森達也氏だ。
騒動のもう一人の主人公・新垣隆氏とは対照的に、ゴーストのごとく姿を消していた佐村河内守の復活なるか。

-意外に親しみやすいキャラの佐村河内守-
この映画で、好意的……とまではいかないものの、意外にも佐村河内氏に親しみを感じてしまった人が多いようだ。
例えば、映画評論家の町山智浩氏は「普通の人はこの野郎!って感じで見るんでしょうけど、ドキドキしちゃいましたね。佐村河内さんの気持ちになって」とラジオ番組で発言している。また、佐村河内氏の奥さんに注目している人も多く、漫画家&イラストレーターの花くまゆうさく氏は「僕は、もう途中から奥さんメインで見ていました。奥さんのチャーミングさが一番リアルでした」と感想を述べている。また、コラムリストの中森明夫氏は「この世にたった一人でいい、自分を本気で信じてくれる人がいたら、世界中の不信にも耐えられる。これは愛の映画だ!」と感動している。
夕食になかなか箸ををつけずにいる佐村河内氏に、森監督が理由を尋ねるシーンがある。佐村河内氏が言うには、「まず豆乳を飲んでからじゃないと食べたくない!絶対飲む!」のだそうだ。なみなみと注がれたコップの豆乳を、ゴクゴクゴクゴクと飲むところは、ちょっと異様というか、でかい子どものように見えて驚かされる。よく付き合ってるな…と奥さんに感心しながらも、ああ、これは夫婦というより母と息子の関係なのかなと、勝手に納得してしまった。

-ドキュメンタリーは嘘をつく?!-
佐村河内氏は「耳がどれくらい聴こえなかったのか」「共作したという主張は通るのか」という疑惑の真相も、しっかりと描かれている。
映画に外国人ジャーナリストが登場し、「なんで作り話をしたの?」「(新垣氏と組んだ)18年間の間に、あなたは楽譜の読み書きを学ぼうとした?」「あなたの中で(文字と図形で書いた)指示書を提出することが作曲だと思ってるの?」「新垣さんが最終的に作ってきた曲を、あなたはどうやって確認したの?」「メロディーは少しでも弾けるの?」とガシガシと質問を投げかけている。
とはいえ、この映画において真相がどうかはあまり重要ではなさそうだ。森監督自身「ドキュメンタリーといえど撮る側の主観や作為から逃れられない」ということを常々主張している。見方は幾通りにもあって、答えは案外自分の中にあるのかもしれない。


■FAKE 予告編


(TEXT by アンクルトモ 2016/5/27)



FAKE

2016年6月4日(土)公開
東風
http://fakemovie.jp

2016年/日本/109分
©2016「Fake」製作委員会

【ストーリー】
佐村河内守氏の自宅でカメラを廻し、その素顔に迫る。取材の申し込みに来るメディア関係者たち、ことの真偽を取材に来る外国人ジャーナリスト…。市場原理によってメディアは社会の合わせ鏡となる。ならばこの「ゴーストライター騒動」は、社会全体が安易な二極化を求めていることの徴候と見ることもできる。 はたして何が本当なのか? 誰が、誰を騙しているのか?

監督:森 達也





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