2016年にこの世を去った映画人たち。

夢とロマン、そして素敵な思い出を与えてくれた彼らに感謝をこめて、
シネグラから追悼の思いを捧げます。


グレン・フライ
Glenn Frey
1948年11月6日生、2016年1月18日没 享年67歳



「Hotel California」「Take It Easy」「Desperado(ならず者)」「One Of These Nights(呪われた夜)」等で知られるアメリカを代表するロック・バンド、イーグルスのリーダーでヴォーカリストでもあるグレン・フライの訃報が飛び込んで来たのは今年の1月でした。まだ67歳という若さで、その8日前のデヴィッド・ボウイの死去に続き、立て続けの訃報で世界中の音楽ファンに衝撃が走りました。

イーグルスでは「Tequila Sunrise」「Peaceful Easy Feeling」「New Kid In Town」などメロウなメロディラインの曲のリードヴォーカルを得意とし、外見に似合わない鼻にかかった甘い声が特徴でした。
そんな彼の映画との関わりは、やはり音楽がきっかけ。
イーグルスは1980年に一旦活動を停止。その後ソロで発表した「The Heat Is On(ヒート・イズ・オン)」が1984年製作のエディ・マーフィー主演の大ヒット映画『ビバリーヒルズ・コップ』の挿入歌として大ヒットを記録。さらには翌1985年に本人も一度ゲスト出演した人気ドラマ「特捜刑事マイアミ・バイス」の映画版『マイアミ・バイス』の挿入歌「You Belong ToThe City」も大ヒット。でもこの2曲とも実はビルボードの1位にはなっていないのは意外でした。当時1位となったのは、REOスピードワゴンの「 Can't Fight This Feeling(涙のフィーリング)」とスターシップの「We Built This City(シスコはロック・シティ)」でした。

80年代のサントラブームに乗じて復活を果たしたグレン・フライは、いくつかの映画に出演していますが、中でも特に印象に残ったのが、トム・クルーズ主演の『ザ・エージェント』(1996)。
有能なスポーツ・エージェントのジェリー・マグワイア(トム・クルーズ)が、大手エージェントをクビになり、その後独立して成功を収めていく姿を描いたアカデミー賞にもノミネートされた佳作です。グレン・フライはこの映画の中で、ジェリーの唯一のクライアントである NFLのスター選手ロッド(キューバ・グッディング・Jr)が在籍するフットボールチームのGM役で出演しています。ミュージシャンが映画出演する時は、音楽に関連したアーティスティックな役柄が多いと思うのですが、グレン・フライはごくフツーのおじさんの姿で登場。最後までミュージシャンらしさは皆無、でもとてもインパクトがあったので、いよいよ本格的に俳優転向?と思ったのですが、その後映画で彼を見かけることはありませんでした。恐らくこの映画の監督で音楽誌の記者だったキャメロン・クロウが友達のよしみで彼を起用したのでしょう。個性的な風貌はどんな役でもこなせそうな雰囲気だっただけにとても残念です。


(Miyuki Homma)


大平 透
1929年9月24日生、2016年4月12日没 享年86歳

声優の大平透さんの名前を知らない方でも、映画やアニメ好きな方なら、その演じた役を聞いたら誰もが一度はその声を耳にしていることでしょう。スーパーマン、ハクション大魔王、アニメ「笑ゥせぇるすまん」の喪黒福造、『スター・ウォーズ』シリーズ旧三部作のダース・ベイダー、アメリカの長寿アニメ「ザ・シンプソンズ」のホーマー、数えあげれば切りがないほどいろいろな声を巧みに演じ分けることのできた声優界を代表する大御所でした。

あまり知られていないのが、1966年にアメリカで放送が開始された「スパイ大作戦」(原題:Mission:Impossible)での吹替。日本では、翌年の1967年からフジテレビで放送され、大人気番組となり第7シーズンまで製作されました。「おはよう、フェルプス君」で始まるあのあまりにも有名なセリフを語る姿を見せない指令役は、実は大平透さんの声だったのです。喪黒福造やハクション大魔王と同じ声とは思えない、堅く沈着冷静な声です。
今年は奇しくも「スパイ大作戦」全米放送開始50周年の記念すべき年にあたります。現在BSジャパンで全話放送中なので、是非大平さんの声を確認してほしいと思います

筆者は、この「スパイ大作戦」のDVD発売時に太平さんご本人に会うことができました。
実際にお会いした大平さんは、昭和ヒトケタ世代にも関わらず、長身の堂々たる体躯の持ち主でお話し好きのとてもダンディな方でした。そして当時70歳後半とは思えない大きな張りのある声で「例によって君もしくは君のメンバーが捕らえられ、あるいは殺されても当局は一切関知しないからそのつもりで。なお、この録音は自動的に消滅する。成功を祈る。」というセリフをノリノリで聞かせてくださいました。

「笑ゥせぇるすまん」の喪黒福造の役は、大平さんご本人の指名で玄田哲章さんが後を継いで2017年に新しいシリーズが製作されるようです。玄田さんといえば、アーノルド・シュワルツェネッガーを始め、数多くの映画、アニメなどで太平さん同様、いろんな声を演じ分けているベテランの声優さんです。声優さんの高齢化が目立つ中、自らの声の後継者を指名した大平透さんの思いを感じながら、新「笑ゥせぇるすまん」を見るのを楽しみにしています。


(Miyuki Homma)


アッバス・キアロスタミ
Abbas Kiarostami
1940年6月22日生、2016年7月4日没、享年76歳



1980年代、ミニシアターブームの恩恵で、アメリカ以外の作品も数多く観る機会が増えました。中でも中東の映画に出会えたことは、とても貴重で新鮮な体験でした。その中のひとつが、アッバス・キアロスタミが監督したイラン映画です。それまで中東の映画を見るチャンスはほとんどなく、私が観た映画といえば1979年に公開されたイスラエルの青春映画『グローイング・アップ』ぐらいでした。この映画は、イスラエルという国の印象も特になく、若者の性への興味は万国共通なんだな、と思った記憶があります。

イラン映画の巨匠と言われると、どうしても深刻な内容の映画を想像しがちですがキアロスタミ作品は、庶民の生活を描いた温かなまなざしに満ちた作品ばかりです。
キアロスタミ監督の名を世界に知らしめた1987年『友だちのうちはどこ?』を改めて視聴しました。宿題を忘れて先生にこっぴどく叱られた少年の隣の席に座っているアハマッドは、帰り際に転んだときに、間違えて彼のノートを持ち帰ってしまったことに気付きます。友だちのことが心配になったアマハッドは宿題をしろと口うるさい母親の目を盗んで、ジグザグ道を駆け抜け遠方に住む友だちの家を捜し回るのですが…。
このようにいたってシンプルなストーリーですが、背景として描かれるイランの街並みやアマハッドが途中で出会う村の人々の演技ではない自然な表情がとても印象に残ります。ラストはアマハッドの苦労は一体なんだったの?と思えるちょっと意外な結末ですが、観ている方も心が温まります。イランの子供たちの素朴で無垢なキラキラした目と生活する人たちの息づかいが聞こえてくるような微笑ましい作品です。
この映画を観て、映画という表現芸術は、美男美女や莫大な予算やドラマチックな展開がなくても実現可能なのだと改めて感じました。
2012年には日本を舞台に日本人俳優を起用した映画『ライク・サムワン・イン・ラブ』を監督し、日本との関わりも深かったキアロスタミ監督。日本で初めて『友だちのうちはどこ?』を上映したユーロスペースでは、今年の8月17日から3日間、追悼上映「ありがとう、キアロスタミ!」を開催していました。『ライク・サムワン・イン・ラブ』はまだ観ていませんが、いつの日か是非劇場で観たい作品のひとつになりました。


(Miyuki Homma)


ジョージ・マイケル
George Michael
1963年6月25日生、2016年12月25日没、享年53歳



2016年に亡くなった著名人の原稿を書いている最中にジョージ・マイケルの訃報が飛び込んできました。私は1983年のファースト・アルバム『ファンタスティック』の頃からワム!の大ファンだったので、とてもショックなニュースでした。
今年は1月10日のデヴィッド・ボウイの訃報に始まり、グレン・フライやプリンス、そして文字通り「ラスト・クリスマス」となったジョージ・マイケルの訃報で音楽界に衝撃が走った1年でした。

ジョージ・マイケルの長い音楽キャリアの中でもやはりこのワム!時代のヒット曲はいつまでも色あせずに近年の映画でも使われています。

彼らが初めて全米と全英で1位を記録した「Wake me Up Before you GO-GO!」は、ポップで元気いっぱいの楽曲で数多くの映画に起用されていますが、最近ではセス・ローゲンが製作と声の出演をしている大ヒットお下劣アニメ『ソーセージ・パーティー』の中でも使われており古臭さを感じさせません。久しぶりにミュージック・クリップを見ると、ジョージ・マイケルのぴちぴち短パン姿とくねくね度が目に焼き付きます。相方のアンドリュー・リッジリーの影の薄さはこのときから始まっていました。

続けて、全米・全英で1位を記録したのはうってかわってねっとりとしたヴォーカルが悩ましい「ケアレス・ウィスパー」。ミュージック・クリップでは女性とのキスシーンも披露しています。この曲もいまだにスタンダード・ナンバーとして耳にすることの多い楽曲ですが、セクシーなシーンを盛り上げるのにはピッタリのせいか、最近では恋愛ドラマアメコミ映画『デッドプール』で使われていました。


2本の映画を、私は偶然にもこの1ヶ月以内に立て続けに観ており、ジョージ・マイケルの音楽の普遍性を実感したばかりでした。そしてラジオからは毎日のように「ラスト・クリスマス」がかかっている矢先の悲報でした。来年のクリスマスからは彼の曲を聴くことはあっても、彼がこの世に存在しないと思うと淋しい限りです。


(Miyuki Homma)


ゲイリー・マーシャル
Garry Marshall
1934年11月13日生、2016年7月19日没、享年81歳

★『マザーズ・デイ』(2017年1/7より順次公開) 予告編


★『プリティ・ウーマン』主題歌「オー・プリティ・ウーマン」 by ロイ・オービソン


★『恋のためらい フランキーとジョニー』予告編


ジュリア・ロバーツの大出世作、映画『プリティ・ウーマン』の名監督ゲイリー・マーシャル。
ウォール街のエリート実業家(リチャード・ギア)が娼婦(ジュリア・ロバーツ)と一週間3万ドルの“専属契約”を結び、二人の関係はいつしか本物の愛へと変わっていく......という現代版シンデレラストーリーは軽快な主題歌にのせて全米年間興収No.1ヒットを飛ばし、ジュリア・ロバーツにゴールデングローブ賞主演女優賞をもたらした。それ以降も『プリティ・ブライド(Runaway Bride)』『プリティ・プリンセス(The Princess Diaries)』『プリティ・ヘレン(Raising Helen)』といった“プリティし放題”の邦題を盛られた作品群を発表。ついでに言うと実妹ペニー・マーシャルも『レナードの朝』『ビッグ』という良質作を放った女流監督であるが、女子だらけのプロ野球チームの実話『プリティ・リーグ(A League of Their Own)』も兄の恩恵で(!?)プリティな邦題になっていたっけ。

大人の恋愛のステキさに接するならば『恋のためらい フランキーとジョニー』を観るべきだ。
アル・パチーノとミシェル・ファイファーという顔合わせだけでも大人の魅力全開だし、いっさい着飾らずに過去の傷を背負って生きる男女という設定にもグッとくる。日本公開当時、本作のプロモーション会議に参加していた私は「プレゼントパブリシティ用のプレミアムグッズは、エンディングで二人が着ていたバスローブを作っちゃったりして〜」という案が口をつき、ロゴ入り高級バスローブが日本オリジナルで実現してしまったというバブリーな思い出が今でも忘れられない…。

ゲイリー・マーシャル監督の遺作『マザーズ・デイ』は、最も信頼するジュリア・ロバーツをメインキャストに迎えて贈る“生涯最後の最高傑作”だ。
子育てと仕事に奔走するシングルマザー、国際結婚と同性愛結婚を選択した姉妹、自分の出生の秘密を知った未婚の新米ママ、妻を亡くした二児の父親…それぞれに悩みを抱えた人々が、一週間後にせまった「母の日」をめぐって予期せぬ出来事に翻弄されていく心温まるハートウォーミング・ストーリーとなっている。『プリティ・ウーマン』以降4度目のゲイリー・マーシャル作品への出演となるジュリア・ロバーツはじめ、TVドラマ「フレンズ」のジェニファー・アニストン、『10日間で男を上手にフル方法』のケイト・ハドソンら美しく年齢を重ねてきた彼女たちが、母として、妻として、女として、奥行きのあるキャラクターを好演。さらに、ゲイリー・マーシャル全30監督作で18作品に出演し、味わい深い演技をみせてきた常連男優ヘクター・エリゾンドも登場する。ジュリア・ロバーツとエリゾンドの共演は『プリティ・ブライド』『バレンタインデー』もあるが、同じ場面に収まるのはなんと『プリティ・ウーマン』以来実に2度目で、本作で交わされる「サラダ用のフォークが正しい」という会話は、『プリティ・ウーマン』でヒロインがホテル支配人(ヘクター・エリゾンド)からテーブルマナーを学ぶ場面へのオマージュとなっているのだ。冒頭シーンのナレーションには実妹ペニー・マーシャルが参加しており、多くの愛の結晶である遺作『マザーズ・デイ』で偉大な功績をプリティに締めくくっている。


(映画ライター 三輪泰枝)


ジョージ・ケネディ
George Michael
1925年2月18日生、2016年2月28日没、享年91歳



1970年代に始まったと言われるパニック映画ブーム。「ポセイドン・アドベンチャー」('72)や「タワーリング・インフェルノ」('74)など映画史に残る傑作があり、一時期粗製乱造により廃れるも、90年代以降SFXやCG技術の進化により多くのヒット作が生まれている。客船沈没ものの「タイタニック」('97)は日本の興行収入で歴代2位(実写作品では1位)の成績を残している。最近でも「ジュラシック・ワールド」(2015)や「シン・ゴジラ」(2016)といった動物パニックものなど、毎年のように公開作がある。
70年代のブームの火付け役とも言われ、続編が相次いで公開されたのが「エアポート」シリーズである。1970年に公開された「大空港」は小説を原作とした映画で、何人もの登場人物が複数のエピソード繋ぎ1つのストーリーを構成するという、それまでにない演出も受け大ヒットした。そして、「エアポート’75」「エアポート’77 / バミューダからの脱出」「エアポート’80」と3本の続編が製作された。(邦題に「エアポート」と付く作品は多いが、この4作品が正統シリーズである)基本的に旅客機に何らかのトラブルが発生し、乗客を救うべく機長や乗員、空港関係者らが奮闘する話になっている。続編を含む4作すべてに出演しているのがジョージ・ケネディである。役柄は異なるが、すべて同じ役名で出演するという稀有な存在になっている。
役者は様々な役柄を演じて分けてこそとも言われるが、この人ほど<助演>がうまい役者もいないのではないだろうか。存在感があり過ぎても無さ過ぎても困る。さらには主演を引き立てなければならない。そこが助演俳優としての腕の見せ所だろう。「エアポート」シリーズではバート・ランカスター、ディーン・マーティン、チャールトン・ヘストン、ジャック・レモン、ジェームズ・スチュアート、アラン・ドロン、ロバート・ワグナーなど、どの作品にも人気俳優が出演していて彼らのイメージが強い。しかし、ふと気づくとそこにはジョージ・ケネディが必ずいる。主役らが困ったときに頼れるオジサンとして、欠かせない存在なのである。
ジョージ・ケネディは自分のポジションを確立していたのか、いい意味で作品を選ばない。主演のレスリー・ニールセンとはまるで漫才コンビのようだったコメディ映画「裸の銃(ガン)を持つ男」(1988)もシリーズ3作品すべてに出演しているし、意外にホラー作品も多い。個人的には全く印象に残ってないが、オードリー・ヘプバーンとケーリー・グラント共演作「シャレード」(1963)でも重要な役を演じている。さらには、松田優作らとともに出演した「人間の証明」(1977)、草刈正雄主演の「復活の日」(1980)と日本映画にまで進出している。40代以上の映画好きであれば、彼の出演作を必ず1本は見ているであろう。
遺作は2014年製作で日本未公開のマーク・ウォールバーグ主演作「ザ・ギャンブラー/熱い賭け」。生涯で180本以上の映画やドラマに出演したとされるジョージ・ケネディだが主演映画はあるのだろうか。彼が唯一アカデミー賞を受賞したのが、ポール・ニューマン主演の「暴力脱獄」(1967)での助演男優賞である。とことん助演の人なのだ。


(あらんすみしぃ)




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