4年に一度のオリンピック・イヤーとなった2016年。シネグラでは、オリンピック競技種目から、意外な掘り出し物まで(!?)、おすすめのスポーツ映画をご紹介します。

「スポーツの秋」に向けて、そして来る「2020年東京オリンピック」に向けて
アナタも新たなチャレンジをしてみませんか?


フォックスキャッチャー(2014年公開)
FOXCATCHER



なぜ大財閥の御曹司は、オリンピックの金メダリストを殺したのか?実話を基に描く衝撃作!
2014年に全米で公開され、第84回アカデミー賞で5部門にノミネートされた本作は、オリンピックで金メダルを獲ったレスリング選手が、ある大富豪によって射殺された事件を描いた実話を基にした映画である。
大富豪のジョン・デュポンは、ロサンゼルス五輪で金メダリストとなったマーク・シュワルツに声をかけ、ソウル五輪を目指したレスリングチーム「フォックスキャッチャー」を結成する。フォックスキャッチャーというのはその練習場となる広大な敷地の名前で、もとは大富豪のデュポン家が所有するキツネ狩りの場所だった。

デュポン財閥とは、テフロンなどを開発した化学会社でアメリカでも有数の大富豪である。その御曹司であるジョン・デュポンが、資金不足のレスリング協会に援助をする代わりに、自らがコーチとなるが奇行がエスカレートし、マークを追い詰めて行く。結局マークの兄であり、金メダリストでもあるデイヴをコーチとして迎え入れることになるが、マークはソウル五輪でメダルに手が届かず、その後悲劇が起こる。悲劇はなぜ起こったのか?というのがこの映画の大きな見どころだ。そして映画を見終わって、タイトルの「フォックスキャッチャー」の意味が初めて納得できる。

この物語の背景となるオリンピックの影の部分が興味深い。
オリンピック競技の中でも、スター選手のいる花形の競技もあれば、4年に1度しかテレビで見ることのできない日の当たらない競技もある。最近ではアマチュアとプロが入り乱れ、その生活レベルもさまざまだろう。
たとえオリンピックの金メダリストでも、その後の生活は保障されることがない現実が、この悲劇の根幹にある。
練習場所の確保や移動の費用など財政的な負担が大きい現実の中、名誉を称えるだけでなく、金銭面での公的な援助もやはり必要であることを実感させられる映画だった。

映画として見ると、俳優たちの演技が素晴らしい。常軌を逸した行動を繰り返すデュポン役は、『40歳の童貞男』やTVシリーズ「THE OFFICE」でコメディのイメージが強いスティーヴ・カレル。本作ではジョン・デュポンそっくりの特殊メイクを施し、鬼気迫る演技でゴールデングローブ賞とアカデミー賞の主演男優賞にノミネートされた。マーク役のチャニング・テイタムもこの作品で演技に開眼し、兄のデイヴ役のマーク・ラファロも安定した名演技を見せてくれる非常に重厚な映画だ。


(Miyuki Homma)


リトル・モー(1978年公開)
Little Mo

1950年代に活躍した実在のテニスプレーヤーの生涯を描いた感動作!小さな体でグランドスラムを達成した彼女に待ち受けていた試練とは?
1970年代後半〜1980年代前半は、『週刊マーガレット』に連載された「エースをねらえ!」が爆発的な人気を博し、実際の競技でもビョルン・ボルグやジョン・マッケンローといった人気選手が活躍して、日本では、空前のテニスブームが起こっていました。そのため、アメリカではNBCでTVムービーとして放映されたこの映画も、日本では1979年に劇場で公開されました。

『リトル・モー』の主人公であるモーリーン・コノリーは1934年カリフォルニア州サンディエゴ出身、1951年で全米選手権を制し1953年に女子テニス選手として史上初の年間グランドスラム(4大大会制覇)を達成しました。身長が160cmほどの小柄な体格だったことから、ビッグモーの愛称で知られる戦艦ミズーリにちなんで、Little Mo(リトル・モー)という愛称で親しまれました。

母子家庭で育った少女は、たまたま通りかかったコートでテニスに魅了され、懇願してコーチにテニスを教えてもらうことになります。当時テニスはお金のかかるスポーツだったため、ラケットも買えず、ボール拾いをしてコーチからの指導を受けますが、母とその再婚相手から激しく反対されます。モーリーンは、その反対を押し切って有名な女性コーチと出会い、目標に向かって努力を続けついに頂点へと昇り詰めていきます。しかし、その後乗馬中に自動車事故に遭い、19歳で選手生命を絶たれてしまいます。その後、事故のショックを癒してくれた男性と結婚して子供を授かりますが、ガンに侵され34歳の若さでこの世を去ります。

リトル・モーを演じるグリニス・オコナーは、デビュー作『ジェレミー』(1973)や『ビリージョー〜愛の架け橋』(1976)で、ロビー・ベンソンとの共演が続きました。どこにでもいそうな等身大の2人の不器用でフレッシュな10代の恋を描いた映画は大人気となり、ロングヘアーとパンタロンが似合うグリニス・オコナーは当時絶大な人気を誇った少女スターでした。TVムービーながら脇を固めるキャストも豪華で、モーリーンの母親役に往年のオスカー女優アン・バクスター、リトル・モーの名付け親であるスポーツ記者ネルソン役をレスリー・ニールセン、そしてモーリーンの夫となるノーマン役をマーク・ハーモンが演じています。

1928年から1984年までテニスはオリンピック競技から外され、残念ながらリトル・モーはオリンピックの舞台に立つことはありませんでしたが、もしオリンピックに出場していたら間違いなくメダルを手にしていたことでしょう。1969年6月21日、ウィンブルドンの試合の前日に彼女はこの世を去りました。彼女のテニス競技人生は約5年ととても短かったのですが、その名はテニスの歴史にいつまでも燦然と光り輝くことでしょう。

最後にテニス映画の新作情報をお知らせします。前述の80年代のスーパースター、ビョルン・ボルグとジョン・マッケンローのライバル関係を描いた映画『Borg vs. McEnroe(原題)』が2017年に公開されます。マッケンロー役はシャイア・ラブーフ、ボルグ役にはスベリル・グドナソンというスウェーデンの俳優が演じることが発表されています。

リオオリンピックでは、錦織圭選手が96年ぶりとなる銅メダルを獲得しました。テニス人気の復活と日本人選手のこれからの活躍に益々期待しましょう!


(Miyuki Homma)


ママはレスリング・クイーン(2013年公開)
Les reines du ring



昼はスーパーのレジ係、夜は命知らずの格闘家?!
スポーツで人生が激変したワケあり女たちの奮闘コメディ〜!

若くしてシングルマザーになったローズは、里子に出した最愛の息子と数年ぶりに再会を果たすが、信頼関係は崩壊寸前。息子がプロレスファンだと知った時、愛情を取り戻すためレスラーになることを決意する。スーパーの同僚たちにチーム結成の勧誘をおこない、集まったのは、夫の浮気癖に悩む50歳のコレット、容姿コンプレックスを持つ怪女ヴィヴィアン、オトコ好きの恋愛依存症ジェシカの三人だった。『スーパーのレジ係がプロレスラーに!?』というニュースは瞬く間に広まり、「メキシコ巨漢軍団」とのスペシャルマッチが開催されることになった。リングデビューに向けた猛特訓が始まり、ズブの素人には過酷すぎるハードワークが続く。やがて、仕事や家族との間にもトラブルが生じ、解雇や仲間割れを引き起こしてしまう。彼女たちはそれぞれの問題を解決できるのか? その答えを求め、ついに試合の日がやって来る──!

オリンピック観戦の醍醐味は、メダルの数や色ということよりも、選手たちのひたむきな生き様やスポーツを愛する人生観にある。それは、様々な事情を抱える本作の主人公たちと同様に、“最凶の現実”と格闘し、“最強の仲間”と友情のタッグを組み、“最驚の夢”に向かって突き進む「勇気」や「感動」であると実感させられる。 親近感の沸く4人の主人公は、人生をエネルギッシュに輝かせようとして日常とは真逆のチャレンジに身を投じる。再起を懸けたスポーツを通し、シリアスなエピソードを笑いに転化しながらつづる爽快エンターテイメントだ。
『みんな誰かの愛しい人』の演技派マリルー・ベリ、『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』の国際的女優ナタリー・バイ、『最強のふたり』で秘書役を好演したオドレイ・フルーロ、『11.6〜最強の現金強奪犯』とは真逆の怪演をみせるコリンヌ・マシエロら、フランスを代表する人気女優は現役レスラーの指導のもとで2ヶ月間みっちりレスリングを体に思えこませたという。超ド派手なメイク&衣装に身を包んだ試合シーンではスタントマンも配備されていたが、最終的にはほぼ彼女たちによる“体当たり映像”が使われた。また、「宙吊りによる入場」「チェーンソーによる乱入パフォーマンス」などお約束の(!?)見せ場も盛りだくさん。“四角いジャングルの女神たち”のリアルファイトには、オリンピック選手たちに負けるとも劣らないプロフェッショナル魂を感じずにはいられないっ!


(映画ライター 三輪泰枝)


瀬戸内少年野球団(1984年公開)


2020年の東京オリンピックで野球が復活!野球に取り組む少年たちの姿を軸に戦後の日本をいきいきと描いた80年代の名作!
1945年8月15日。国民学校の校庭に置かれたラジオから玉音放送が流れ、頭を下げて聞いていた少年の『天皇陛下のお言葉はよくわからなかった』というモノローグで始まる映画「瀬戸内少年野球団」。作詞家・阿久悠が出身地の淡路島を舞台に書いた自伝的小説を、篠田正浩監督が映画化した。
故夏目雅子演じる国民学校初等科(小学校)教師の駒子先生が生徒らと野球に取り組む姿を軸に、後家となった彼女に迫る義弟との関係、戦死したと思っていた夫の復員、女子生徒の父が戦犯により処刑されること、男子生徒の兄の戦後特需に踊らされた転落人生、床屋の女主人の波乱万丈な日々など、昭和21年前後の混乱期に漁で賑わう港町の喧騒を描いている。
これでもかと、いろいろなエピソードが語られるが、題名に「少年野球団」とある通り、基本的に物語の主人公は国民学校の児童らである。校内の児童らで結成された弱小チームがどんどん強くなり、最後には米兵チームとの試合で引き分けに持ち込むまでになる。とは言え、野球はあくまで日常の一部。戦争により家族を失ったりした生徒らが、監督でもある駒子先生を母のように慕いながら恋をしたり悪さをしたり、「二十四の瞳」のごとく、戦後を元気に生き抜いていく様を活写する。今の子役らに比べれば拙い演技だが、それが却って田舎町の純朴な子供らしく見ていて微笑ましい。

本作は27歳で夭折した夏目雅子の遺作(出演作として)であり、奇しくも夏目の死因と同じ急性骨髄性白血病を発症したことのある渡辺謙の映画デビュー作である。さらには、数年前に独自のダイエット法で注目された元甲子園球児の美木良介の映画デビュー作でもある。子役では、ヒロインの武女(むめ)を演じた佐倉しおりが結婚後に引退したが、バラケツ(不良)を演じた大森嘉之は2000年くらいまでは映画などにも出演していたし、級長の竜太役の山内圭哉は現役で名バイプレーヤーとして活躍している。山内はドラマ「民王」や映画「パコと魔法の絵本」(2008)でのヤクザなど、その筋の役が多く当時の面影は全くない。なんと、その彼が今秋放送予定の武井咲主演によるドラマ「瀬戸内少年野球団」に出演予定とのこと。ちなみに「瀬戸内少年野球団」のドラマ化は二度目で、1993年に鈴木保奈美と吉田栄作の主演で放送されている。
「瀬戸内少年野球団」は1984年の邦画興行収入ランキングで10位くらいだったようである。1位は「里見八犬伝」(1983年12月公開)、2位は「メインテーマ」(併映:「愛情物語」)で薬師丸ひろ子作品がワンツーフィニッシュしている。キネマ旬報の1984年度ベストテン(邦画)では、「瀬戸内少年野球団」にも出演していた伊丹十三監督の「お葬式」、薬師丸ひろ子主演の「Wの悲劇」(1984年12月公開)に次いで3位だった。80年代の邦画界で絶大な人気を博していた薬師丸ひろ子と、やはり同じ時期に話題作に出演しさらなる活躍を期待されていた夏目雅子との共演が観たかった…。



(あらんすみしぃ)


ピンポン(2002年公開)



努力、友情、憧れ、挫折、再起…スポ根映画の王道を行く作品。
オリンピックの種目にも選ばれる卓球。卓球は世界最速の球技と言われているのを知っていますか?これはタイトルを見てわかるように卓球を舞台にした映画。
最初見始めるとギャグ要素が強い映画なのか?と思いつつ…進んでいくと一転し、そこから個性豊かなキャラクター陣が繰り広げる熱いスポコン展開が待っていた。原作松本大洋の人気漫画を実写化した作品である。
自分の才能に自惚れているところがあり自由奔放な主人公、通称ペコ(窪塚洋介)と内気で無口…冷静沈着なもう一人の主人公、通称スマイル(ARATA)。
ペコは、将来ヨーロッパに行って卓球で頂点を目指すという夢を持っているが、卓球部の練習はさぼってばかり。幼馴染のスマイルは、幼い頃虐められていたときに、いつもペコに助けてもらった。スマイルの中でペコはヒーローであった。そんなペコに卓球を習って、目立たないが卓球の才能を持っているスマイルは、インターハイチャンピオンの海王学園の風間や、中国のナショナルチームから落ちて日本で再起をはかる孔からも注目される。
インターハイ県予選がはじまると、ペコはもう一人の幼なじみ、負けるはずのないと思っていた佐久間に破れる。スマイルは孔を追い詰めるが、情をかけてしまい逆転負けをする。風間に認められたい佐久間は、スマイルに試合を挑むが完敗し、退学し卓球を離れる。この時はっきりと「努力」だけでは越えられない「才能」を突き付けられたようで見ていて心苦しい気分になる。
佐久間は負けたことで卓球をやめようとしていたペコに会い、卓球を続けるように励ます。佐久間の中ではペコはただのライバルではなく「憧れ」だったことを直接言われた時、ペコは何を思ったのでしょう…。ペコは再起を目指し、自身を鍛え直す。今までのペコだったらありえないことである。 そして翌年のインターハイ予選が始まる…二人の変化、成長が見どころ。
ヒーローはフィクションの世界にだけ存在するのではない。スマイルにとってペコはずっとヒーローでありつづけるのだと思いました。この作品でいうヒーローとは「憧れ」の象徴なのではないでしょうか?
今も昔も自分の中の憧れを、青春を思い出させる作品である。



(船田 歩)





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