ぼくのエリ 200歳の少女

ぼくのエリ 200歳の少女
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ぼくのエリ 200歳の少女 [DVD] ぼくのエリ 200歳の少女 [DVD]
(2011/02/04)
カーレ・ヘーデブラント、リーナ・レアンデション 他

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★★★★☆

ストックホルム郊外に母親と2人で暮らす12歳の少年オスカーは苦痛に
満ちた毎日を送っていた。学校で陰湿な苛めにあっているのに誰も気づかない。
それほど孤独だった。ある日、隣りに謎めいた少女エリが越してくる。
「君の友だちにはなれない」といきなり告げるエリだったが、毎晩のように中庭で
顔を合わせ、寝室の壁越しにモールス信号を送り合うようになる。

スウェーデン制作のロマンティック・ホラーです。
高評価を受け、ハリウッドでも『モールス(邦題)』の名でリメイクされました。

美しい作品。

敬遠気味の作品ってある日何故か急に観たくなる時がありませんか?
僕にとってそういった作品の一つがこの映画なのです。

僕のような夜な夜な『アオーン』とか鳴きながら、優しい心を持ちながらも
その醜い容姿ゆえに真夜中にしか街を歩けない可哀想なモンステァーには
こういった綺麗過ぎるジャケットの作品は敬遠してしまうんですよね。

この度、晴れて『あぁこの金髪の子可愛いな、エリっていうのかウフフ』と
清純たる理由でレンタルさせて頂きました。

が、エリは黒髪の方で金髪は男でした。

く、美少女かと思っていたが美ショタだったか。だがまぁそれもいい。

~~~今回はネタバレで行きますのでご注意下さい。~~~

少女エリと少年オスカーの出会いと想いの交錯を描いた本作。
ホラーカテゴリとはいえロケーションもキャラクターも美しい文学的な作品です。
映像的にも雪とヴァンパイヤの相性って良いですよね。

二人の出会いやとても純で切ない交流、鬱屈していた主人公オスカーの成長など、
ドラマとしても心引かれる映像ですが、エリはある秘密を抱えた存在なんですね。

彼女はヴァンパイヤ、人間の血液を啜らなければ生きられない吸血鬼なのです。
共に越してきた男性は彼女の守人、世話役のような位置づけの人間なのでしょう。
信仰的なのか愛情なのか、エリの為に殺人による血の収集と社会的な暮らしを
提供する献身的な彼は、何を思い暮らしているのでしょう。

彼の迎える悲劇的な最期も自己犠牲に溢れていました。
もしかしたら人の道を外れた自らの人生を終わらせる望んだ最期だったのかも。
と、思ったら原作はもっとゲスい設定でした。騙された。

人間を襲い、血を啜った後には命をも奪う彼女ですが、そうすることで人間が
吸血鬼としての業を背負うことを防いでいるのでしょう。
オスカーが彼女の正体を知った後も、彼女を救い理解しようとしたのも、
エリの抱える運命やオスカーに対する特別な想いを汲み取った結果なのでしょう。

無音の殺戮。

クライマックス。エリに対する理解と軽蔑の葛藤にあったオスカーは去りゆく
彼女を見送ることしか出来ませんでした。そんな彼をいじめ集団が罠にかけます。
いじめのリーダー格がこれまた根性の腐った兄貴を引き連れ、オスカーをプールに
沈め、溺れさせようとします。

意識が遠のくオスカー、しかし、彼の背景ではあまりに凄惨な殺戮が行われています。
すんでのところで助けられるオスカー、彼が見たのは作中もっとも美しく描かれた
少女エリの純粋に彼を思う視線でした。

そしてラスト。エリと共に列車で旅に出る主人公。
オスカーは覚悟したのでしょう。逃避ではなく共存を選んだのでしょう。
いつか悲劇的な終焉を迎えることを想像させながら、切なく終劇を迎えます。

オスカーがエリと初めて会った時の『君とは友達になれない』の言葉。
映画の流れとしてはとても深い意味を持ったセリフになりましたね。

しかし少女エリは正しくは少年エリ。純情恋物語ではなく正確にはBLなわけです。
でもでも『美少年ショタのBL祭りじゃー!』と騒いではいけませんよ。

リメイク版はどうかな。楽しみです。



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