ヒットマンズ・レクイエム

ヒットマンズ・レクイエム
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★★★★☆

クリスマス・シーズン。ロンドンで一仕事終えた新人ヒットマンのレイは、ボスの指令で
ベテランのケンと一緒にベルギーのブルージュへ向かい、次の指示を待つことに。
ところが、神父を殺害した初めての仕事で偶然その場にいた子供を巻き添えにしてしまった
一件を引きずり、罪の意識に苛まれるばかりのレイ。そんな中、ケンはボスから密命を受ける。
それは、“レイを消せ”との指示だった。しかし、ケンは実行の矢先、逆に自殺を図ってた
レイを思いとどまらせ、抹殺未遂に終わる。やがて、それを知ったボスが直接ブルージュに
乗り込みレイを追跡、ボスを諫めようとするケン、追いつめられていくレイ、という三つ巴の
駆け引きに発展していくのだが…。

コリン・ファレル(『モンスター上司』、『プライド&グローリー』など)
ブレンダン・グリーソン(『グリーン・ゾーン』、『キングダム・オブ・ヘブン』など)
レイフ・ファインズ(『タイタンの戦い』、『ハート・ロッカー』など)

個性的な殺し屋達によるバイオレンスな描写、そしてコミカルというか
シニカルというか、非常に独特な雰囲気のある作品です。

なんといってもまず素晴らしいのがそのロケーション。
ベルギーのブラージュという街を中心に物語が映し出されるのですが、
その情景NHKの映像を観ているかのように観光名所の説明をしてくれたり
するのが憎い演出ですね。

俳優陣も実力派揃いで映画をより濃厚にしています。
皮肉ばかりだけどなんだか素直さというか心のある殺し屋を演じるのが
コリン・ファレルなんですが、きちんと主役としての仕事をしています。
状況に応じて右往左往する姿がなんだか笑えてしまいますね。

相棒ケンを演じたブレンダン・グリーソンの実力も折り紙つき。
なんといってもあの哀愁が堪りません。
情景を愛し、人も大事にする、でも殺し屋。なんていう皮肉な役柄を
しっかりと楽しませてくれました。

二人を追うボスを演じたのがレイフ・ファインズ。
神経質な反面単純な思考を持ち合わせた”美学の統率者”として登場します。
すごく魅力的ですが話の流れ上極端な思考の持ち主として登場するので、
別の作品でもギャング系の役を観てみたいです。あ、007はどうなのかな?

一つ注意が必要なのが、割りと流血や凄惨なシーンが出てくるので
苦手な人はちょっとした覚悟が必要です。
ですが、息を呑むほどに美しい街で
起こるそれらの描写は逆にアートな感じで、個人的には逆に引き込まれる
ような感覚におちいりました。

そして与えられたコメディ風味。
あくまで風味なのですが、個性的なキャラクターのやり取りや各個の
性質を表現するような静かな笑いがあります。
ものすごく雰囲気のあるロケーションですが、文学チックを気取ったり、
哀愁や生真面目だけを押し出した作品ではないところがいいですね。

自分自身を変えるかもしれない出会いや悲しい別れ、サスペンス的な
ストーリー展開などが絶妙に混ざっており、「どんな映画?」と聞かれた
時に非常に困る作品です。

ラストもとんでもなく皮肉です。
まさにこの物語の集大成というかなんというか・・・。
伏線の回収。とまでは言いませんが奇妙な不条理さを感じますね。

悲劇なのか喜劇なのかのバランスが絶妙な本作。ちょっといつもと違う
映画が見たいな、という時にはお勧めしたい一品。

これ舞台作品として観れたら楽しいだろうな~~。



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