プリデスティネーション

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★評価★★★

一歩ずつ、大胆かつ丁寧に真相へ導いてくれるSFサスペンスでした。

物語は、何かしらのミッションを課せられ、その途中で大怪我を追う一人のエージェントの目線で始まります。
彼が背負う使命や与えられている指令の内容は「何者かの大規模な犯罪行為を防ぐ」ということしか最初はわかりません。

しかし、彼の所属する組織には大きな秘密が隠されており、とても特殊な行動により任務が遂行されている、ということは見て取れます。
やがて傷を癒やすことに成功した彼は長きに渡り活動を続ける凶悪な爆弾魔"フィズルボマー"を阻止するための「最後のミッション」へと旅立ちます。

シーンは大きく変わり、ニューヨークのとあるバーが映し出されます。
軽快に仕事をこなすバーテンダーを務めるのは先程のエージェント(イーサン・ホーク)。

程なく来店した不思議な雰囲気を持つ男との会話は、彼が「女性だった頃」の話へと移り変わり、彼の数奇な運命をたどる人生の回想シーンが流れ始めます。
「彼」が少女だった頃の名前はジェーン。孤児院で育つ幼少期、優秀ではあるが精神が安定しない少女期、宇宙への憧れ、そして恋愛、出産と度重なる「運命」に翻弄される女性の人生が語られて行きます。

そんな「彼」が「ジョン」として行き始めるところに話がたどり着く頃、バーテンダーはジョンに自らが時空を超えて活動する秘密組織のエージェントであることを明かし、ジョンの人生を翻弄した一人の男への復讐の機会を与えます。
そして物語は核心のクライマックスへ。

いや、フィズルボマーどうしてん?

と本来はこうなりそうなところですが、物語が面白く、それでいて多くのヒントを散りばめてくれているので、映画のたどり着くラストを想像しながら観ることができる内容となっていました。

タイムパラドックス作品かつ時空警察が主役の映画でありながらアクションやSF満載のド派手なシーンなどは登場しない静かな作りとなっています。

それでも十分に楽しめる内容となっているのは、演者たちの実力によるものだし(特にジョン/ジェーン役のサラ・スヌークがイイ!)複雑な物語を複雑で哲学的なもので終わらせない脚本にあるといえます。

仕事人イーサン・ホークのファンにとっても見逃せない作品です。

ネタバレ

クライマックス以降、ジョン/ジェーン・バーテンダー・ジェーンと恋に落ちた謎の男・ジェーンの娘"ジェーン"、そしてフィズル・ボマー、これらの主要な登場人物が、全て同一人物であることが明かされます。

時空を超えてこれらの物語を紡ぐ"使命"を持った主人公。
そして彼が行きつく先を見たとき、不思議なパラドックス感に包まれました。

主人公を導いた組織の上役であるロバートソンの辿る世界線がどういったものなのか、主人公を取り巻く時空以外の世界がどういった未来を向かえていくのかも気になるところですが、考えると頭痛くなりそうなのでやめておきます。

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