ゾンビ・ヘッズ 死にぞこないの青い春

ゾンビ・ヘッズ 死にぞこないの青い春
Pocket

ゾンビ・ヘッズ 死にぞこないの青い春 [DVD] ゾンビ・ヘッズ 死にぞこないの青い春 [DVD]
(2012/07/04)
マイケル・マッキディ、ロス・キダー 他

商品詳細を見る

★★★★☆

3年ぶりに目覚めたオタク系青年マイクは困惑していた。街がゾンビの集団と
それを迎え撃つ人間たちの姿で溢れていたのだ。その時マイクを銃弾が襲う。死ぬ!
と思ったのも束の間、全く痛みを感じないマイク。あれ?と訝しがる彼にブレントと
名乗るゾンビが親しげに声をかけてきた。ブレントが語るところによると、彼らは
人間の記憶と知性を取り戻してしまった珍しい“半分ゾンビ”だというのだ。
「人間にもゾンビにもなれない半端ものかよ…。」と打ちひしがれるマイクだったがポケットを
探るとそこには愛する恋人に渡しそこねた婚約指輪が。ブレントの励ましもあり、彼らは
時に人間、時にゾンビのフリを繰り出しながら恋人を探す旅を始める。しかし、やっかいな
“半分ゾンビ”を軍が見逃すはずもなく、ゾンビハンターたちが彼らの行く手を阻むべく
猛スピードで追撃を始めていた…。

これは楽しい!泣けるゾンビ映画だずぇ!
まさに「明日に向かって腐れ!」の状態。

近年ゾンビが主役の映画がいくつも公開されていますね。
コリン」、「ゾンビ処刑人」、「ゾンビーノ」なんかもいいですね。
今作はそういった「ゾンビが主人公」となる映画の一つです。

やや低予算のインディーズ映画となる本作ですが、実績あるスタッフと有能な
俳優らが休みも少ない強行姿勢で撮影をおこなったとか。
なんとゲリラ撮影中に出演者が逮捕されるといったハプニングも発生したそうです
貴重な撮影期間も伸びるという過酷な撮影にも関わらず、俳優さんたちが次の仕事を
キャンセルしてでも本作に参加し続けた話もあるとのこと。
うーんゾンビ愛ですね。

今作、ゾンビ化した男二人が主人公となってくるわけですが最初から
映像的なテンションが高く面白い。
当初悲観的なマイクと比べ、ゾンビ化した人生を更に楽しもうとしている
ブレントの存在は非常に大きかったですね。ただのお馬鹿役のノーテンキ
かとおもいきや、人情に熱い面や仲間を大切に思う気持ちが強く、
非常に臭い人間、いや、人間臭さのあるキャラクターでした。

かくしてマイクの元恋人探しをすることになった二人は、道中、やや知能の
高い屈強なゾンビ・チーズや退役老人らと行動を共にし、不思議な協力関係を
築いていきます。
この流れも映像が楽しく、ロードムービー的なワクワク感を持たせてくれました。

彼らを追う企業の武装チームも個性が豊かで飽きさせない展開です。
討伐チームと主人公らの攻防戦や舌戦もオリジナリティとユーモアあふれる内容。

例のごとく悪徳化学企業の実験によりゾンビ現象が広がっているわけですが、
実は主人公マイクの過去に悪徳企業の社長が関わっているなど、捨てるところの
少ない脚本は非常に評価できるのではないでしょうか。

小ネタ的に楽しめる部分が多いのもいいですよね。
ソンビ映画のお決まりである「ゾンビはゾンビを襲わない」というルールのもと、
今作の主人公らはゾンビに襲われることはありません。
逆に、いつも人間を襲う側である彼らが人間らに追われ四苦八苦する姿は面白い。

その他、シモネタやグロ要素なんかも交えたブラックなネタも満載なので
ゾンビ映画ファンならずとも笑えるシーンは多いかもしれません。

一方、高ぶり続ける感情や精神と裏腹に、確実にボロボロになっていく姿を見つめ
ゾンビとなった自分を悲観したり皮肉ったりするシーンは切ないですね。

「コリン」でも死者(ゾンビ)から生者への愛情表現が描かれていましたが、
今作ではセリフや表情が豊かなのでセンチメンタルな映像表現に退屈することはなかったです。

ラストも湿っぽくするのではなく、なぜかすっきり気持ちよく終わらせているのがグッド。
だって映画だもんね、作り手の「見てる奴を楽しませよう」というのがよく伝わる作品でした。



ゾンビ映画カテゴリの最新記事